論文を推敲するときのチェック項目



 論文をひととおり書き上げたとき、その原稿は投稿までの、あるいは提出までの道のりの、まだかなりはじめの段階にあると考えるべきである。日本語でも英語でも、世に出す論文は推敲に推敲を重ねたものでなければならない。論文の作成において、最初に書き上げる労力に比べて、推敲にかける労力のほうがはるかに大きいと考えるべきである。以前、小倉義光先生が「メソ気象の基礎理論」を書かれたとき、全体を書き上げてから5回以上書き直されて、最終的できたものは初期のものとは相当異なるものとなったということをお話しいただいたことがある(書評に以前書いたことであるが)。ましてや私たちのような初学のものは、推敲には時間をかけすぎるということはない。推敲にはいろいろな点で検討するべき内容がある。以下にその例をあげておくので、推敲をするときの参考にしていただきたい。

 なお、ここでいう推敲をするという場合は、研究の結果には誤りがなく、それが正しく論文に書かれているということが前提である。また、英単語のスペルの間違いは論外である。共著者、指導教官、あるいは周辺の誰かにみてもらう前に、十分な推敲が必要である。そのためには書き上げた後、数週間その論文から離れてから、推敲をすることが望まれる。はじめて書くときは、頭に血が上った状態で書いているので、時間をおいて頭を冷やしてから推敲をするとよい。あらためて読んでみて自分でも何となく引っかかるところは、誰が読んでも引っかかるので、推敲して直すべきである。

  1. 論文全体について。

    • 全体を通して、首尾一貫していて、矛盾がないか?  
    • 論筋、論理展開、説明が1次元的で、読んだところまでの内容で、そこまでの内容がすべて理解できるようになっているか?
    • 序論で書いた目的を達成したものになっているか?
    • 論文全体の長さは適切か?冗長な部分、重複している部分がないか?
    • 内容が必要でかつ十分なものだけで構成されているか?論旨に不要な内容、なくてもよい内容を含んでいないか?


  2. 章・節について。

    • 章立て、節の構成は適切か?
    • 一つの章が長すぎたり、逆に短すぎたりしないか?
    • 章や節の順序は論文を説明するのに適切に並べられているか?


  3. 段落について。

    • 一つの段落が長すぎたり、短すぎたりしていないか?
    • 一つの段落が一つの内容となっているか?
    • 一つの段落が一文で構成されたりしていないか?(一文一段落は必ずしも悪いわけではないが、避ける方がよい。)


  4. 文章について。

    • 主語と述語の対応がついているか?単数形・複数形と述語動詞の関係など。
    • 一つの文章が長すぎないか?
    • 一つの文章の中に複文・重文が1つ以下となっているか?(一つの分の中に複数の関係詞がある文はよくない。)  
    • 修飾語と被修飾語は可能な限り接近しているか?


  5. 文法的な内容。



  6. 語句について。

    • よく似た単語と間違っていないか?(参照: 間違いやすい単語
    • 同じ単語を異なる表記にしていないか?
    • 英英辞典で調べて適切な単語や語句を用いているか?
    • 口語の単語や語句を用いていないか?
    • 不必要に長い語句を用いていないか?(その語句は簡単な1単語で置き換えられることがある。)


  7. 図・図説について。(参照: 図・表の説明

    • すべて必要不可欠な図か?
    • 図の順序は適切か?
    • 図はわかりやすく、鮮明か?
    • 図説は簡潔でかつ必要な情報をもれなく含んでいるか?


  8. 表・表の説明について。

    • すべて必要不可欠な表か?
    • 表中の数値に間違いはないか?
    • 表の説明は簡潔でかつ必要な情報をもれなく含んでいるか?


  9. 謝辞について。(参照: 論文のアウトライン:謝辞

    • 謝辞に含めるべき人、組織、アプリケーションソフト、計算機センター名、プロジェクトオフィス名などが含まれていて、適切にAcknowledgeされているか?
    • その順番は適切か?
    • 謝辞に含めてよい人だけが含まれているか?


  10. 参考文献について。

    • 論文で引用されている参考文献がもれなくリストアップされているか?
    • 論文で引用されていない参考文献が含まれていないか?
    • 参考文献の書き方は、そのジャーナルの形式にあったものか?


  11. その他の注意点。

    • 投稿しようとしているジャーナルに、論文全体の内容、分量、形式があっているか?
    • 内容は学会、セミナー等で十分議論されたものであるか?
    • 投稿期限のあるような場合、それに十分間に合うものとなっているか?
    • 英文校閲はどのようにするのか?




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