「台風0711号(ナーリー)」


2007年9月14日 


 9月14日に沖縄本島南部に接近した台風ナーリー(T0711号)は驚くほど急速な発達を示した。気象庁の発表では14日午前3時(日本時間、以下同様)には、その中心気圧は985hPaであった。それが同日午後10時には945hPaまで発達した。およそ20時間で40hPaも中心気圧が低下したことになる。急速に発達する温帯低気圧として知られている「爆弾低気圧」は、24時間でおよそ24hPa低下するものを指す。この台風はその2倍の速さ、平均で1時間に2hPaも低下したことになる。(今年7月に沖縄付近で急速に発達した台風4号でさえ、平均で1時間あたり1hPaだったのに比べても如何に急速な発達だったかがわかる。)その結果、この台風は14日の午後には気象庁の台風ランクでは2番目に強い「非常に強い」台風となった。驚いたことにこの台風が熱帯低気圧から台風のレベルに達したと認定されたのはその前日の13日昼頃である。この急発達と中心気圧の低下は、気象庁ですら予測できなかった(14日15時の予報は980hPaであった)。

 さらにこの急発達は北緯20度より北で起こっている。熱帯低気圧から台風への発達は北緯10度前後の低緯度で起こる。それに比べてはるかに北で台風への発達が起こったことになる。なぜこのような高緯度でこのような急激な発達が起こったのだろう。その原因の一つは海面水温が高いことである。しかしながらおそらく原因はそれだけではない。この台風の直前にほとんど同じ海域に熱帯低気圧が存在した。それは台風にさえ発達しなかったのである。台風ナーリーの急速な発達は、海面水温が高いということだけが原因ではない。他に未知の何かがこの急発達をおこした原因となっているはずである。

 もう一つのこの台風の特徴はその大きさである。沖縄本島の南にあったときその大きさは直径が200km程度である。沖縄本島の大きさと比べても台風ナーリーが如何に小さい台風であるかがわかる。上記の台風4号もナーリーと同じ「非常に強い」というランクの台風であった。一方で大きさは全く異なる。台風ナーリーは驚くほど小さく、その形はまん丸の対称性のよい形をしている。台風全体の大きさも小さいが、眼も小さい。しかし暴風域はしっかりあり、中心から半径90kmの領域が暴風圏となっている。この領域はほとんど降水域と同じである。何が台風の大きさを決めるのか、その基本的な問題にもまだ明確な回答が得られていない。

 ちょうど1年前、台風0613号が石垣島を通過し大きな被害をもたらした。その直後に宮崎県延岡市で竜巻をもたらした台風である。この時期、災害をもたらす台風がしばしば発生する。今年は特に海面水温が高いので、台風が発達しやすいように思える。ところが同じ時期に昨年は13号であったものが、今年はまだ11号である。今年は台風が今のところ少ない。これもまた不思議なことである。(ただ、先島諸島では台風以外の雨がいつもの年より多いということを多良間島の方から伺った。)台風は平均で1年に27〜28個程度発生する。特に少ない年でも20個程度は発生する。そうであれば今年はこれからまだ10個ぐらいは発生することになる。9月から11月の間に発生するとなると、各月に平均3個は発生することになる。これからがまだ台風に注意が必要である。

(2007年9月14日)

2007年9月15日以後の台風ナーリーの記録。

久米島で観測史上最大の最大瞬間風速62.8m/sを15日01:26時に記録した。
9月15日朝、ナーリーは東シナ海をゆっくり北上中で中心気圧940hPa。



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