「大型で非常に強い台風4号」


2007年7月14日 


 気象庁の階級分けで大きさが「大型」で、強さが「非常に強い」台風0704号が、沖縄地方を通過し、九州の大隅半島に上陸した。現在、太平洋にぬけて西日本に沿って東に進んでいる。この台風は梅雨期に来る台風としては、通常のものとは異なり大型で非常に強い台風であるが、それ以外にもいくつかの点で、特徴的な台風である。

 まず特徴の一つとして、急速な発達と速い速度での沖縄域への接近である。台風になった直後の7月9日9時では中心気圧が994 hPa で、北緯9度、東経143度付近にあったが、72時間後の12日9時には、北緯21度、東経129度に達し、中心気圧は935 hPaまで深まっている。この間に時速40kmで北西に進み、沖縄に影響が出始めるところまで達している。沖縄は台風となったと思ったら、急発達して急襲されたという印象である。ただ、気象庁はこの進路をよく予測していた。

 次にあげる特徴は、台風の眼に対して降雨帯の分布が非対称であることである。たとえば2004年に沖縄の名護市の上を南東から北西に通過した台風0418号は、眼のまわりの降水分布は、どの方向にも降水がある対称性のよいものであった。今回の台風0714号の場合は眼の壁雲ははっきりとしていたが、その周囲の降水の分布は南側から東側に偏っていて、特に西から北側にはほとんど降水のない領域がみられた。これは南側が湿っており、一方、北側が乾いているときにこのような分布になる。秋の遅い時期に来る台風にこのような特徴がみられることがある。その典型的なものは2004年の台風23号(TOKAGE)である。

 沖縄を急襲した台風4号は、沖縄地方に達したところで、急に移動速度が遅くなった。このような降水分布をした台風が、接近するときの半分の速度、約時速20kmで沖縄の西側をゆっくり北上したので、沖縄本島は24時間にわたって、暴風領域に入っていたことになる。一方で、宮古島地方は降水活動が弱く、冬の寒気流中にみられるような何本もの細い降水帯がみられただけであった。

 この季節の台風は9月から10月の台風に比べて穏やかなものが多い。ところがこの台風4号は、大型で比較的強い台風で、大隅半島に上陸したときは945hPaというこの季節としては顕著に中心気圧の低いものであった。台風の中心は九州の南西側にあるとき、東側に偏在する降水により、九州の東側、宮崎県などは激しい豪雨となった。

 台風は九州をぬけて四国沖の太平洋上を東に進んでいる。九州の東岸、四国、紀伊半島及び静岡では、台風の東側で北向き運ばれる大量の水蒸気により豪雨となっている。これは梅雨前線も原因のひとつであるが、むしろ、太平洋に向く地形によって豪雨になっている面もある。2004年の台風18号は強風により、一方、同年の23号台風は大雨によりそれぞれ大きな災害をもたらした。今回の台風4号は強風と豪雨の両方の性質をもっており、強風という面でも大雨という面でも危険な台風である。

(2007年7月14日)

図1: 2007年7月13日14:00時(日本時間)の気象衛星の赤外画像。


図2: 2007年7月13日13:50時(日本時間)の気象庁レーダー画像。


図3: 2007年7月14日00:00時(日本時間)の気象衛星の赤外画像。




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