The Third GAME-HUBEX Workshop on Meso-scale Systems in Meiyu/Baiu
Front and Its Hydrological Cycle
Summary and Discussion
- 日時
- 2001年12月9日(日) 9:00〜11:30
- 場所
- コートヤードマリオット昆明ホテル
Point of Discussion は以下の4点.
- Moisture source, moisutre sink in Meiyu/Baiu front and its
cycling process
- Land-surface process of Meiyu/Baiu front
- Precipitation process in the Meiyu/Baiu front
- What kind of data/observations do we need NEXT?
1. Moisture source, moisutre sink in Meiyu/Baiu front and its
cycling process
問題提起 (by Prof. Fujiyoshi)
- 梅雨前線の水蒸気の起源は下層の南よりの風による水平輸送であ
る.
- 水蒸気の水平輸送はその上流域 (熱帯域: 東南アジア, 南アジア
域) でのモンスーンシステムの年々変動や季節内変動に関する
理解が不可欠となる.
水蒸気輸送過程に関する現状の理解 (by Prof. Ding)
- モンスーンは季節スケールでの風向の変化を指す言葉である.
- 気候学的に, モンスーンにおける水蒸気輸送は「南インド洋→ア
ラビア海→ベンガル湾→南シナ海→中国大陸(インド洋におけ
る西向き輸送)」の形で行われる.
- モンスーンのオンセット(開始)以前には, 上記の西向きの水蒸気
輸送は見られない.
- 篠田の疑問: 上記の水蒸気輸送は連鎖系で考えられるべきもの
なのか? であるならば, 上流のどこかで系が変化した (水蒸気
収支が変わった) 場合に, 下流への影響はないのか?
- 質疑応答 (by Prof. Uyeda)
- Q) 水蒸気輸送に関する年々変動は分かっているのか?
- A) 今後,研究されるだろう.
研究すべき現象の時空間スケール (by Prof. Fujiyoshi)
- 水蒸気の source, sink, transport について以下の時空間スケー
ルでの研究が必要である.
-
- 水平スケールとしては,
- 総観規模 (Synoptic Scale)
- 領域スケール (Regional Scale)
- メソスケール (Meso Scale)
- 時間スケールとしては,
- Climatic (10 years)
- Interannual
- Annual (1 year)
- Interseasonal
- Mesoscale (days)
- Meso-α, β, γ (hours)
- Interannual, Interseasonal は Prof. Yasunari のコメントによ
り追加.
- 水蒸気の source, sink, transport に関する Process 研究も必
要.
梅雨前線の総観スケールの現象 (by Prof. K. Kato)
- 梅雨前線の特徴としては, 前線帯への大量の水蒸気の流入と弱い
傾圧性により特徴づけられる.
- 日本 (九州,中国地方) における梅雨前線に伴なう大雨は以下の
要素により特徴づけられる.
- 太平洋高気圧場
- Meso-α低気圧の接近
- 両者の間の気圧傾度が大きくなり, 地衡風の風速が増す
- 地衡風による南からの水蒸気の流入が増大する
- 梅雨前線帯南側のシステム (Stationaly low-level southerly wind)
だけではなく, 北側のシステム (Synoptic scale heat low)
も重要である.
- 質疑応答 (by Prof. Wang)
- Q) 梅雨前線帯における水蒸気収束をもたらすための,
北からの冷たい気流についての考えは?
- A) 傾圧性が弱いため, 北からの気流が常に影響を及ぼす訳
ではないと考える. しかしながら, Slow moving cut-off low
の寄与は考えられる. また, 局所的に形成される低温域 (層
状域における蒸発冷却?) は, 梅雨前線上で発生する小さなス
ケールの現象には影響する可能性が大きい.
-
- コメント (by Prof. Yasunari)
- 15日周期 (二週間) 変動の重要性を強調.
- チベット高原東縁のサイクロジェネシス (Tibetan edge
cut-off low cyclogenesis) と十五日変動との関連が考えら
れる.
- 水蒸気輸送の経路 (Channel) として, 南シナ海からの
ルートの他にチベット高原東縁 (ミャンマーから中国雲南省
周辺) 上空のLLJによる運ばれるものもあるのではないだろ
うか?
- 篠田の疑問: 残された課題は何なのだろうか?
- 篠田の疑問: 中国大陸上で気圧傾度が強まる原因がチベット
高原東縁のサイクロジェネシス起源のメソ低気圧 (15日周期
変動) と関連があるということか?
2. Land-surface process of Meiyu/Baiu front
問題提起 (by Prof. Fujiyoshi)
- 陸面過程の梅雨前線への影響は?
- Basin scale の水蒸気の recycling 過程, 地表面からの加熱によ
る総観規模の低気圧の形成過程を用いた研究も必要.
- 水文分野の視点からは, 何が解れば水文気象結合モデルを用いて
河川流量(River run-off)を見積ることができるのか?
- 土壌水分量
- 地表面からの顕熱・潜熱
- 地表面における放射収支, など
- 再解析データの Quality check も必要.
陸面過程について更なる研究を要する要素 (by Prof. Xie)
- Surface, subsurface runoff
- Ground water table
- Vegetation dynamics
- Moisture, heat in the soil
- Parameterization, sparce vegetation (heteroginity)
- Appications
水文気象結合モデル (by Dr. Tachikawa)
- 第一段階として, 流出(Run-off)モデル+河道モデルと水文気象
データを組み合わせた河川流量の見積りを行った.
- 第二段階として, 流出モデル+河道モデルに, 陸面過程モデル(SiBUC)
による水文シミュレーションデータを入力として河川流量の
見積を行った.
- 第三段階として流出モデル+河道モデルに大気陸面結合モデルに
よる水文シミュレーションデータを入力とした河川流量の予
測を行った.
- GAME再解析データを利用したところ, かなりよい再現結果が得ら
れた.
- 自然条件 (natural condition) における見積までは行うことが
できるが, 水管理 (water regulation) や水利用 (water use)
を含む人間活動に伴なう水循環をいかにモデルで表現するか
が問題となっている.
- 質疑応答 (by Prof. Ding)
- Q) どのスケールでの大気モデル (Clomate, Regional,
Local) と水文モデルのカップリングを行うのか?
- A) 研究目的によりケースバイケースとなる. 大気モデル,
陸面モデル, 流出モデル, 河道モデルと分けて考えた場合,
現状では大気モデル+陸面モデル+流出モデルのカップリン
グはすでに様々なスケールで行なわれている. このカップリ
ングモデルと河道モデルとをカップリングするかどうかは,
その流域の特性による. One way で考える場合は, すでにで
きている. カップリングは様々なスケールで行なわれつつあ
るので, 農業などの人為的な水利用 (water use) の効果を
どのように取り扱うかがこれからの主要課題と考える.
- 質疑応答, コメント (by Prof. Yasunari)
- Q) 水文モデルに結合する気候モデルに対して要求され
る最小分解能は?
- A) 研究すべき領域や現象によりケースバイケースである.
- C) 計算機の能力が上がったので, 高分解能の気候モデ
ル (水平解像度が15km) と水文モデルとのカップリングも現
実的な問題として考えられるようになった.
- コメント (by Dr. K. Tanaka)
- 水文モデル中にGCMをダウンスケールさせた形でのメソ
スケールモデルが必要となる (細かいスケールを観るため?).
- コメント (by Dr. Tsuboki)
- 気候モデルにおいては地表面温度の予測が重要である.
潜熱の見積を行う際には地表面付近での水の量が効くので,
水文モデルとの結合も重要となる.
- コメント (by Prof. Xie)
- 地表面における水収支を考える場合には, 降水の効果,
流出の効果などに蒸発量の値は依存するので, 陸面→大気の
One Way だけではなく, 大気陸面相互作用 (Two Way) での
検討が必要となる.
まとめ (by Prof. Fujiyoshi)
- 問題提起で挙げた項目のほかに検討すべき要素として, 以下の
要素も研究課題となる.
- 人間活動等による水の利用
- 地表面温度
- 降水量と風
- NDVI
- 検討すべきは領域気候モデルスケールのエネルギー収支問題.
3. Precipitation process in the Meiyu/Baiu front
問題提起 (by Prof. Fujiyoshi)
- 何が梅雨前線による降水の強さ,継続時間,降水量を決めている
のか?
- 傾圧性
- 総観規模, ないし Meso-αスケールの擾乱
- 下層の frontgenesis による二次循環
- 上層の cold core low
- マルチスケールの階層構造 (スケール間相互作用) も重要である.
- Meso-βスケールの降水システムが組織化して Meso-αスケール
のシステムに成長する過程については, まだ解明されていな
い.
- 梅雨前線の活動は, その西端付近での擾乱の発生 (チベット高原
の東縁付近で発生する SW-Vortex) に依存しているのか.
- Low Level Jet (LLJ) の役割と形成過程も重要である.
梅雨前線に対する理解の現状 (by Prof. Uyeda)
- 前線の北側に heat low が、南側に太平洋高気圧 (WPSH) がある.
- 前線の南側下層から水蒸気が輸送される.
- 前線の南側の領域では太平洋高気圧の縁に沿って浅い対流が発生
する.
- この領域の対流は浅い対流であり, 降水は warm rain process
によるものである.
- 前線内部において Meso-βスケールの対流システムが Meso-αス
ケールのシステムに発達する.
- 梅雨前線の南縁では水蒸気の流入に伴なって Cloud street が見
られることがある.
- 前線帯で深い対流が発達する場合には, 北側からの乾燥して (冷
たい?) 気塊の流入がある.
- 梅雨前線の南縁で深い対流が発生する場合には, 北側に広がった
層状域での蒸発冷却の効果が重要である.
GAME/HUBEX 後の展開 (by Prof. Uyeda)
- 未だに, GAME/HUBEX 領域において一日当たり Meso-β scale low
がいくつ発達するか? そのシステムがどの程度の降水をもた
らすか? については解らない.
- GAME/HUBEXにおいて取得されたデータを用いて現象に対する作業
仮説は立てられる様になったと思う. 今後は, 予報や現業に
得られた知見を生かしていく段階に入ってきたと思う.
- 例えば三次元レーダーデータを活用することにより,
- 降水タイプの分類を通じて降水強度の見積を行うことができ
る.
- 雨量計データとの照合によりリアルタイムの Adjustment を
行うことができる. (経験的に?)
- GAME/HUBEX で得られたデータを利用して研究活動を行っていきま
しょう. "Utilize HUBEX data and make research works!!"
- コメント (by Mr. Hu)
- 梅雨前線の解析を行なう上での重要なポイントは以下の二
点である.
- 水蒸気の起源という点での南西風: 気象状況による力学的
に決まる.
- 水蒸気輸送: 陸面過程 (特に放射過程) が重要となる. 雲
の効果により放射収支が変わり, その結果として蒸発
量に影響を及ぼすため.
- 篠田の疑問: 亜熱帯高気圧の強度と位置についてのコメントが
欲しかったところですが?
安徽省における今後の観測体制の紹介 (by Mr. LiBai)
- 既に安徽省気象局でドップラーレーダー (合肥) は保有.
- 追加システムとして, 2003年から2004年にかけて, 以下のシステ
ムを導入予定.
- バイスタティックドップラーレーダーシステム: 実質的にデ
ュアルドップラーレーダー観測を行うことができる.
- ウィンドプロファイラシステム
- 自動雨量計システムの展開
- 発雷監視システム (LLS)
- AWS
- 観測結果により地表面状態の変化が対流活動に影響を与えている
ことを示唆.
- 数値モデル(MM5)へのリモートセンシングデータの導入(レーダー
データの同化)も検討中.
まとめ (by Prof. Fujiyoshi)
- 今後の研究に利用可能なもの, 方向性など.
- レーダーデータ(TRMM)の利用
- 可降水量の見積
- 雲活動に関する研究
- レーダーネットワークを用いた降水量の見積: Z-R 関係の
精度向上とレーダーデータの品質管理が重要.
4. What kind of data/observations do we need NEXT?
問題提起 (by Prof. Fujiyoshi)
- 予報システムの一環としての 4DDA 手法の導入.
- 新しい観測プロジェクト: J-SAWCE 他.
水文学における将来的な研究 (by Dr. K. Tanaka)
- 現在の状況
- モデルの開発と検証 (SiBUC, AVIM, VIC, etc.)
- 気象データセット(地上付近)をメッシュデータの形で整備
- 陸面過程のみでのシミュレーション(データ同化?)
- 流出モデルとの結合 (10kmスケールの水平解像度)
- 現状における問題点
- 毎時間毎の雨量データが必要 (降水量分布の見積)
- 土地利用データの整備
- Irrigation water (灌漑用水量)の見積
- 水利用の季節変化の見積(データが5〜8月しかない)
- 今後の研究課題
- 日本で開発した水田における地表面過程のスキームを中国
で合う様にの改良する必要がある.
- 衛星データ(GMS)を用いた土壌水分量の同化(カルマンフィ
ルターの利用).
- リクエスト
- 1時間毎の降水量データ: レーダーデータを利用できるが,
全ての領域についてデータが得られている訳ではない.
- USGSの土地利用データは水田の割合が大きすぎるため, こ
の部分を修正した土地利用データ.
- 人間活動に伴なう水利用(灌漑用水量など)のデータ.
- 梅雨期以外の季節のデータ.
Singuan River における観測 (by Mr. Qian)
- これまでは雨量や水文データの解析, 土壌水分量, 水利用状況の
調査などを行ってきた.
- 今後は, 流域における水収支モデルの構築, 洪水予測の実施, レ
ーダーと雨量計システムを用いたメソスケールの降水システ
ムによる降水量の見積などを行っていく.
- 具体的には以下の通り.
- Basin スケールでの水収支モデルの構築
- 洪水制御・管理システムの構築
- レーダー,AWS,雨量計システムを利用した降水量の見
積
- 見積られた降水量に対する水文モデルの適用
- 水文モデルの構築
- 上流域と中流域での水文モデル (conceptual, mixed etc.)
の構築
- 異なる時間,空間スケールの水文モデルが必要
GAME Session (by Prof. Fujiyoshi)
- GAME Sessions (GAMEの今後の活動, 研究すべき内容)は以下の
通り.
- アジアモンスーンのオンセット
- アジアモンスーン域における気候変動とその水資源への
影響
- 熱帯林,北方林(寒帯林)とのエネルギー・水循環の比較
- アジアモンスーン域における表層水とエネルギー収支の
見積
- 大陸スケールでのエネルギー・水循環の研究における再
解析データの利用
- アジアにおける水循環のモデリング
- 熱帯域と亜熱帯域における降水システムのメカニズムに
関する研究
GAME-Phase2 (by Prof. Yasunari)
- 2001年の10月1日から2日にかけて名古屋で行われた GISP (GAME
International Science Panel)において, GAME のデータセ
ットに基づいたさらなる研究を行うことが決定された.
- 以下の WGs (Working Groups) が提案されている.
- 雲・降水WG
- 陸面・境界層WG
- エネルギー・水収支研究WG (WEBS)
- モンスーンシステム研究WG
書記: 篠田太郎, 金田幸恵, 甲山治
文責: 篠田太郎