ドップラーレーダー

DOPPLER RADAR

気象レーダーを用いることにより、雲内に存在する降水粒子の分布を測定することができる。雨や雪などの降水粒子は電波を反射する性質を持っており、アンテナから電波を発射し、降水粒子にあたって返ってきた反射波を信号処理し、反射波の強さ(反射強度)から降水強度を求めている。 ドップラーレーダーでは、雲内の降水粒子の分布に加えて、雲内の風の挙動を知るすることができる。風の挙動を知るためには、ドップラー効果を利用しており、入射波の周波数と入射波が降水粒子に当たって戻ってきた反射波の周波数の差から風の挙動を知ることができる。しかしながら、1台のドップラーレーダーでは、レーダーに対して降水粒子が近づいているか、遠ざかっているかという一次元的な動きしか捉える事が出来ない。そこで、降水システムの観測の時は複数台のドップラーレーダーを用いて同時に観測を行う事が多い。2台以上のドップラーレーダーの観測結果を解析する事(デュアルドップラーレーダー解析)で雲内の三次元的な気流構造を知ることが出来る。

名古屋大学では2台のドップラーレーダーを所有している。現在は、沖縄県の下地島と多良間島にそれぞれのレーダーを設置し、梅雨前線や台風の詳細な構造を解明するための観測を行っている。

本研究室ではドップラーレーダーによって得られたデータを解析し、非常に多くの研究成果が得られている。ここでは修士論文・博士論文において研究の一部もしくは全てにドップラーレーダーを使用した研究室内の研究を紹介する。


・梅雨前線帯

湿潤場における地形性線状降水システムの構造と形成過程

梅雨初期に東シナ海で発生した線状降水システムの構造と維持過程

梅雨期の湿潤環境場に形成される対流雲とその群の構造とメカニズム

梅雨前線南側の暖湿気流中で形成された線状降水システムの構造と形成過程

Study on Characteristics of Convection of Medium Depth around the Meiyu Front over the East Part of Continental China

梅雨前線帯におけるメソスケール擾乱の階層構造に関する研究


・日本海降雪雲

冬季寒気吹き出し時に大雪をもたらすメソスケールシステムに関する研究

日本海寒帯気団収束帯上に発生したメソスケール渦状擾乱の構造と発達過程

冬季日本海上に発生するトランスバース降雪バンドの形成過程

冬季日本海上で発達した線状降雪帯の構造と形成課程


・熱帯域で発生する降水システム

西部熱帯太平洋域において2004年12月から2005年1月にドップラーレーダーで観測された対流セルの特徴


・夏季に発生する降水システム

夏季に山地と平野の境界で発達した積乱雲の内部構造


・大陸上で発生する降水システム

亜熱帯湿潤域におけるメソ対流系内の対流セルの寿命を決定する環境場の特徴

暖候期の中国大陸上に発生する積乱雲の構造と降水特性


fig1

図1: 2003年1月29日、北陸地方で観測された線状降雪帯の降水粒子の分布(カラー)と風の分布(矢印)を示す。線状降雪帯の北側で卓越する西北西風と、南側で卓越する西風との間に明瞭な収束線が形成されており、その収束線上に活発な降雪システムが発生していることがわかる。


fig2

図2:図1の線状降雪帯の各高度ごとの構造を解析した図。


fig2

図3:図1の線状降雪帯(上)のA-Bにおける断面図(下)。