研究紹介(2012年度)

冬季北海道内陸部の層状雲上端で観測された過冷却水滴層

0oCから-40oCまでの温度範囲では広く過冷却水滴が存在する。 過冷却水滴は氷粒子の形成や成長と密接に関係しており、降水形成過程や放射伝達過程に おいて重要な役割を果たす。2011年2月に、北海道内陸部の陸別町において雲粒子ゾンデを 用いた氷晶粒子の直接観測を実施した。また、陸別町と訓子府町にXバンドマルチパラメータ レーダを設置して、同期観測も実施した。観測期間中に、温帯低気圧の通過に関係しない 層状雲に雲粒子ゾンデ5基を放球し、このうちの3基で過冷却水滴が観測された。図1に 2011年2月11日19時45分に放球された雲粒子ゾンデによって取得された過冷却水滴の画像を示す。 これらの過冷却水滴を含む雲は、レーダ反射強度(Zh)の最大値が30 dBZ程度の 層状雲であった。この層状雲の過冷却水滴層の特徴を調べた。

雲粒子ゾンデ画像から判断した雲頂高度は、3事例とも高度約3 kmであった。2月11日のケース では過冷却水滴層が3層あったが、25日と27日のケースでは1層のみが観測された。3事例に 共通して、雲頂付近に過冷却水滴層が存在していた。雲頂付近に存在する過冷却水滴層の 厚さは60 mから230 m、その温度範囲は-21oCから-25.5oCであった。 過冷却水滴層と大気の安定度、水蒸気量の関連を調べるために、雲粒子ゾンデと結合して 放球されたラジオゾンデによって観測された温位、相当温位、飽和相当温位の鉛直分布を図2に 示す。過冷却水滴層付近で、温位は絶対中立に近い成層をしている。雲頂付近の過冷却水滴層の 直上(700 hPa付近)には強い安定層が存在し、それより上空では非常に乾いた気塊が存在 していることが見て取れる。

今回の観測結果より、事例数は少ないものの、北海道内陸部で形成される温帯低気圧の通過に 関係しない層状雲の上端に、高頻度で過冷却水滴が存在していたことを確認した。このことから、 層状雲内部において、固相粒子(氷晶)と共存して過冷却水滴が維持されるメカニズムが 存在することが示唆される。先行研究より、北極域の層状雲で雲頂付近に数日にわたって 持続する過冷却水滴層が形成されることが知られている。本事例では降水エコーの継続時間は 数時間とそれほど長くないものの、過冷却水滴層より上層が非常に乾いている点は共通している。 これらの違いを整理しながら、冬季北海道内陸部の層状雲の上端で過冷却水滴層がどのように 維持されているかを今後明らかにしていく予定である。

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図 1: 2011年2月11日19時45分(日本標準時)に放球された雲粒子ゾンデにより観測された 雲頂付近の過冷却水滴の画像。

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図 2: 雲粒子ゾンデと結合して放球されたラジオゾンデにより観測された温位(K、実線)、 相当温位(K、点線)、飽和相当温位(K、破線)、水平風(m s−1、矢印) の鉛直分布。灰色の帯は過冷却水滴層を示す。

2007年7月6日に韓国済州島ハラ山北側を通過した降水システムの強化過程

2007年7月6日、停滞前線に伴って形成された降水システムによって韓国済州島のハラ山北部と 東部に強い降水がもたらされた。済州島は東西方向に長い楕円形(長さ78 km、幅35 km)で、 その中央部にハラ山(高さ1950 m)がある。高度3 km以下の相対湿度がおよそ95%という梅雨期 特有の非常に湿潤な大気環境場で、この降水システムはハラ山の北側を通過した。本研究は、 この降水システムの詳細な3次元構造と降水強化過程をデュアルドップラー解析により示す ことを目的とする。

降水システムは済州島北西のおよそ20 kmの沖合で、南西−北東方向の走向をもつ線状降水帯 として形成された。降水システム内部の反射強度が45 dBZ以上の領域として定義した降水セルの 発達の様子を、ハラ山との相対的な位置関係に対応して3つの段階に分けて調べた。 降水システムがハラ山に近付く段階(図3a)では、降水システム後面からの比較的強い 西風と、前面の弱い南西風との間で下層収束が形成され、降水システムの後面(西側)に 列状に上昇気流域が観測された(図3a左側の斜線部分)。一方、降水システムがハラ山に 接近するにつれて、ハラ山北西斜面と降水システムの間が狭くなることで、降水システム 前面の南西風が強化され、局地的に上昇流域域が形成されるようになった(図3a右側の 斜線部分)。この時、済州島における高層気象観測の結果から、フルード数は0.2と低い 値であった。このため、停滞前線の南側の湿潤な気流はハラ山の周囲を迂回するように 流れていたと考えられる。この迂回流により形成される上昇気流域が済州島北西部沿岸に 到達した降水システム内部の降水セルの強化に重要な役割を果たしたと考えられる。 降水システムがハラ山の北側を通過している段階でも、湿潤な迂回流による水蒸気の 供給を受けることで降水システムの南側の降水セルは維持されていた(図3b)。降水システムが ハラ山の東斜面に到達すると、降水システム後面からの弱い西風と、ハラ山の南側から東側を 迂回してきた比較的強い南西風との間で下層収束が強化され、降水セルが再発達していた (図3cの斜線部分)。本事例では、それほど強くない下層風によりフルード数の値が小さく、 結果としてハラ山の周囲を迂回する下層風を形成することで、ハラ山の北西側だけでなく、 北東側の斜面においても強い降水域を形成した点が注目に値する点である。

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図3: 2007年7月6日、韓国済州島のハラ山周辺での降水システムの強化過程の3次元模式図: (a)ハラ山への接近時、(b)ハラ山の北側通過時、(c)ハラ山の風下側通過時。降水の 3次元分布を灰色で示す。濃い灰色は高度2 kmにおける反射強度で定義される降水セルの 位置を示す。長い白実線(破線)の矢印は上昇気流(下降気流)の存在を、短い白実線の 矢印は高度2 kmにおける水平風を、灰色の矢印は高度2 kmにおける山岳により影響を受けた 気流を、斜線部分は高度2 kmにおける上昇気流域をそれぞれ示す。太実線は済州島の海岸線を、 細破線は高度500 mの等高線を示している。済州島の長軸に沿った地形(ハラ山の鉛直断面)を 背景に示す。

現在・将来気候における熱帯低気圧の最大強度を支配する環境場の気候学

現在気候と将来気候において、熱帯低気圧の最大強度に寄与する環境場を理解することは、 熱帯低気圧の最大強度の将来変化を予測する上で重要である。環境場の物理量のうち、 海面水温や対流圏界面付近の温度は熱帯低気圧が獲得するエネルギー量に決定的な影響を 及ぼすために、熱帯低気圧の到達可能な強度の指標となる。Emanuel (1986) は、海面水温と 対流圏界面付近の温度などの熱力学的な物理量から、理論的に熱帯低気圧の到達可能強度の 上限(Maximum Potential Intensity; MPI)を導出した。しかしながら、現在、熱帯低気圧の 強度の推定にMPIは広く利用されているものの、ほとんどの熱帯低気圧の最大強度は従来の 経験的・理論的なMPIに到達していない。このことは熱帯低気圧の最大強度を制限する他の 要因が存在することを示唆している。Zeng et al. (2007, 2008) は、海面水温と対流圏界面 付近の温度という熱力学的な物理量に加えて、熱帯低気圧の移動速度と水平風の鉛直シアという 力学的な物理量を考慮して、熱帯低気圧の経験的な最大強度 (Empirical Maximum Intensity; EMI)を提唱した。なお、MPI、EMIとも環境場の物理量から 熱帯低気圧の最大風速を見積もる量であるために、速度の単位で表現されるものである。 本研究では、北西太平洋域を対象として、現在気候と近未来気候、将来気候におけるEMIと その構成因子を計算し、EMIの将来変化とその構成因子の寄与を見積もることを目的とする。

解析には気象研究所大気大循環モデルの出力結果を用いる。現在気候と近未来気候、将来気候の シミュレーション結果を用いて、北西太平洋域におけるEMIを計算したところ、将来気候では 現在気候に比べて有意におよそ20 m s-1増加することが示された(図4)。EMIの 構成因子の寄与についても調べた。海面水温は近未来気候、将来気候とも有意に増加し、その 変化量も大きいことから、EMIの増加に最も寄与していることが示された。対流圏界面付近の温度は 近未来・将来気候とも有意に増加することでEMIの増加を抑えるものの、その寄与は大きな ものではなかった。力学的因子のうち、熱帯低気圧の移動速度は将来気候においても変化は 小さく、EMIの変化に対する寄与はほとんどみられなかった。水平風の鉛直シアは将来気候に おいて有意におよそ1〜2 m s-1減少する領域が局所的に出現し、その領域における EMI の値をおよそ2〜4 m s-1 増加させていた。力学的因子として、水平風の 鉛直シアの減少による効果は、将来気候におけるEMIの増加に対しておよそ10%の寄与をしている ことが示された(図5)。

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図4: 北西太平洋域における暖候期(5月〜10月)のEMIの現在気候に対する将来気候の変化量。 正の値は将来気候におけるEMIの増加を示す。単位は m s-1 である。

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図5: 北西太平洋域における暖候期(5月〜10月)のEMIの変化量に対する力学的因子 (ほぼ水平風の鉛直シア)の寄与を濃淡(m s-1)で示す。

2009年8月9日兵庫県佐用町に大雨をもたらした停滞性マルチセル型降水システムの構造と維持過程

激しい降水をもたらす降水システムのうち、線状に組織化されたものの構造については多くの 先行研究がある。しかしながら、団塊状の降水システムの構造についての研究はあまり 見られない。2009年8月9日、兵庫県佐用町付近で1時間に最大89 mmという多量の降水が もたらされ、多くの被害が出た。気象庁レーダのデータを解析したところ、この多量の 降水は停滞した団塊状のマルチセル型降水システムによりもたらされたものであった。 本研究では、団塊状の降水システムの構造と維持過程を明らかにするために、気象庁レーダや 地上観測の結果を解析し、雲解像モデルCloud Resolving Storm Simulator(CReSS)を用いて 水平解像度500 mでの数値実験を行った。

降水システムが発達している時、四国沖の太平洋上に台風9号(T0909)が位置しており、 北東縁辺を回り込むように暖湿気塊が近畿・中国・四国地方に流入していた。降水システムは 瀬戸内海上で発生し、中国地方への上陸とともに発達して、中国山地の南斜面に位置する 佐用町付近で約2時間にわたって停滞した。

CReSSを用いてこの降水システムを対象とした数値実験を行ったところ、団塊状の降水システムの 形状やおよそ2時間にわたる停滞を再現することができた。ただし、降水システムが停滞した 位置はやや北東にずれていた。図6にCReSSによるシミュレーション結果から降水システムが 停滞していた時刻(8月9日20時00分)の降水強度、高度1 kmにおける水平発散と水平風を示す。 降水域が線状ではなく団塊状に広がっていること、大きな降水強度の値 (120 mm h-1)を示す降水セルが降水域の南東側に位置していることが見て取れる。 この降水セルの北側から北西側にかけて下層発散域が広く分布しており、この発散域からの 北風、西風が降水システムの南側や西側に向けて吹き出している様子が見て取れる。この 発散風と暖湿な南東風が収束することによって、降水システムの南東側だけでなく西側に おいても新しい降水セルが発生し、降水システムが団塊状になったと考えられる。図7に図6と 同時刻の高度5 kmにおける雲混合比と水平風を示す。降水システムの西側には、この高度に おける一般風と同じ南西風が見られる。一方、降水システムの東側には、降水システムを 回り込む様な南風が見られている。降水システム内部において、降水システムの西側に位置する 降水セルは南西風に流されて北東進している。一方、降水システムの南東側の降水システムは 南風に流されて北進している。気象庁レーダの観測結果でもこれらの降水セルの移動方向の 相違は見られていた。また、異なる方向に移動する降水セルが併合することで降水強度が 急激に増加する様子がシミュレーション結果で見られた。

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図6: 2009年8月9日20時00分(日本標準時、計算開始11時間後)における降水強度 (mm h-1:コンタ)、高度1 kmにおける水平発散 (1×10-4 s-1:濃淡、濃い色が収束域)、 水平風(m s-1:矢印)。降水強度のコンタは30 mm h-1毎である。 白い領域は地形である。

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図7: 図6と同時刻における降水強度(mm h-1:コンタ)、高度5 kmにおける雲混合比 (g kg-1:濃淡)、水平風(m s-1:矢印)。雲混合比は雲水混合比と 雲氷混合比の和である。降水強度のコンタは30 mm h-1毎である。

CINDY観測期間における3次元大気海洋結合領域モデル(CReSS-NHOES)を用いた 毎日のシミュレーション実験

2011年10月1日より2012年1月31日まで、マッデン・ジュリアン振動 (Madden-Julian Oscillation: MJO)に伴う大規模な雲域が熱帯インド洋上で形成される過程を 明らかにするための国際共同観測プロジェクト Cooperative Indian Ocean experiment on intraseasonal variability in the Year 2011 (CINDY2011) が海洋研究開発機構の主導で実施された。同観測プロジェクトの期間中、 雲解像モデルCloud Resolving Storm Simulator (CReSS) と海洋研究開発機構で開発されている 非静力学海洋モデルNon Hydrostatic Ocean model for the Earth Simulator (NHOES) との 結合モデル(CReSS-NHOES)を用いて毎日のシミュレーション実験を実施した。

計算領域は、CINDYの高層気象観測アレイを含むように設定した。CINDY期間中、 水平解像度0.045度(およそ4.8 km相当)でのCReSS-NHOESを用いた大気海洋結合 シミュレーション、同解像度でのCReSS単独シミュレーションをほぼ毎日実施した。 大気側の初期値・境界値として気象庁より配信されるGlobal Spectral Model(GSM)の結果を、 海洋側は米国のNaval Research Laboratoryより配信されるNavy Coastal Model (NCOM)の結果を 使用した。シミュレーション実験は毎日12 UTCを初期値として36時間にわたって実施し、 後半の24時間分をシミュレーション結果として使用した。

海洋研究開発機構の海洋地球研究船みらいの定点観測点は熱帯インド洋上に四角形に展開された 観測アレイの南東端(東経80.5度、南緯8.0度)に位置していた。図8にみらいの Conductivity Temperature Depth profiler(CTD)により3時間毎に定点で観測された深さ 120 mまでの塩分濃度とCReSS-NHOESのシミュレーション結果における同地点の塩分濃度の 時間深度断面図を示す。CTDによる観測結果では、塩分濃度が急激に変わる海洋混合層の 底の深度が10月上旬から徐々に深くなり、10月下旬には100 m程度まで深くなっていた。 一方、11月中旬以降には亜表層に低塩分濃度の水が存在していることが見て取れる。 シミュレーション結果では、混合層の底における水温(図略)や塩分濃度の急激な変化や、 11月中旬以降の亜表層への低塩分濃度の水塊の流入を十分に再現できていない。これらは、 NCOMの鉛直解像度が粗いことに起因すると考えられる。

計算領域内での海面水温、海面からの顕熱・潜熱フラックスなどについてのCReSS-NHOES 結合実験と1次元海洋のみを含むCReSS単独計算実験の比較を行ったところ、両者の差は ほとんど見られなかった(図9)。降水域に対応して顕熱・潜熱フラックスの値に大きな 差が出る領域は見られるものの、その面積は領域全体に比べて小さいために領域平均の 差として顕在化しないということが理由である。この結果から、熱帯域における1日程度の 数値実験では、3次元海洋モデルを雲解像モデルに結合した影響は大きくなく、1次元海洋 モデルがある程度の効果を表現していると考えることができる。

この結果を受けて、気象学研究室では日本周辺域においてCReSS-NHOESを用いた毎日の シミュレーション実験を開始している。

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図8: みらい観測点(東経80.5度、南緯8.0度)における2011年10月1日(DOY=274)から11月30日 (DOY=334)までのCTDにより観測された塩分濃度の時間深度断面図(上図)、および CReSS-NHOESにより計算された塩分濃度の時間深度断面図(下図)。濃淡が塩分濃度(PSU) を示す。みらいはDOY=297日からDOY=303日とDOY=332日以降の期間は観測を行っていない。

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図9: CReSS-NHOESを用いた観測アレイ内の潜熱フラックスの時間変化。黒実線はCReSS-NHOES結合 モデルの結果、灰色破線はCReSS単独計算の結果を示す。CReSS単独計算では鉛直1次元の 海洋熱伝導モデルが動作している。

2011年台風12号に伴う紀伊半島における降水構造の時間変化

2011年の台風12号(T1112)の四国、四国・中国地方への上陸と北上に伴い、紀伊半島の多くの 地域で1000 mmを超える降水が観測された。この間、総降水量が最も多かった奈良県上北山では 1808.5 mm を記録した。これは同地点の年間総降水量のおよそ3分の2に相当する量である。 T1112の接近および9月3日の高知県への上陸までの間、台風の進路の右側(東側)に当たる 紀伊半島では、暖湿気流の流入に伴って時間雨量20〜30 mm の強い雨が24時間以上にわたって 連続して観測された。一方、 T1112 の通過後には、数時間にわたって時間雨量 100 mm を 超えるような猛烈な雨と落雷が観測された。台風の通過時と通過後の降水構造の相違を 明らかにするために、気象庁の観測、国土交通省のXバンドマルチパラメータ(MP)レーダ、 中部電力提供の落雷位置評定システムを利用して解析を行った。

図10に三重県宮川における降水量とエコー頂高度の時系列を示す。T1112 の接近・通過時 (2011年9月4日03時以前)には、MP レーダで観測された10 dBZ のエコー頂高度はおよそ 10 km 程度と比較的低かった。9月3日03時頃に10分間雨量が15 mm に達するような猛烈な 雨が観測されたが、この時のエコー頂高度も約10 km であった。この時、降水粒子の形状 (縦横比)の指標となるレーダ反射因子差(ZDR)は融解層付近でも正の値を 示しており(図略)、霰粒子がほとんど存在していないことが示唆された。この間、T1112 に 伴う南西からの暖湿気塊が紀伊半島の山岳により強制的に持ち上げられることで雨滴を形成し、 暖かい雨過程によって地上に強い降水をもたらしたと考えられる。一方、T1112 通過後には、 10 dBZ のエコー頂高度は14 km に到達するほど高くなり、30 dBZ のエコー頂高度が10 km を 超えるような時間帯も見て取れる。融解層よりも上層でのZDR は負の値を示して おり、落雷も観測されたことから、霰粒子が存在していることが示唆された。図11にT1112 通過後の9月4日04時におけるレーダ反射強度の南西-北東断面図を示す。北東側にエコー頂高度が およそ12 km まで達している領域が見られる一方、その西側(図の左側)ではエコー頂高度が およそ5 km程度と、急激に低くなっている。この領域は、気象衛星の水蒸気画像の暗域に 対応しており、乾燥空気が流入していたと考えられる。下層では南西から暖湿気塊が、 上層には西側から乾燥した気塊が流入して不安定度が増加し、落雷をもたらすような激しい 対流が発達したと考えられる。

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図10: 2011年9月2日12時(日本標準時)から4日12時までの三重県宮川における10分間降水量 (棒グラフ)とMPレーダにより観測された同地点の10 dBZエコー頂高度(太実線)、 30 dBZエコー頂高度(細実線)の時系列。宮川付近で落雷が観測された時刻を+印で表している。

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図11: 9月4日04時の紀伊半島を南西−北東方向に横切る断面におけるMPレーダにより観測された 反射強度の鉛直断面。濃淡は10 dBZより大きな領域を10 dBZ 毎を表している。


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